Diario di PIPPO　～ピッポの日記～

トスカーナ州シエナの、それは小高い山の頂きにあった。
700年以上も前に建てられた教会だ。



管理する人もなく、屋根は朽ちて天井がない。
もう風化するのを待つだけの教会。。。




そんな教会を初めて訪れたのは日本に来ることなど考えもしなかった頃。
なぜか結婚する人と一緒にもう一度訪れたいと願い、教会をあとにしたのを覚えている。

あの頃は、イタリア人と結婚して、イタリアで生活をするのだと、当たり前のように思っていた。

数年後イタリア人の彼女ができて結婚の話も出ていたが、あの教会の存在をすっかり忘れていた。
しかし彼女とはすれ違いがあり別れることになった。
喧嘩ばかりだったが別れは辛いものである。



しばらく一人で過ごし、あるとき偶然フィレンツェで妻と出会う。
妻には私と共通の友人がいて、2人とも友人の誕生パーティーに招待されていたのだ。出会いはそのパーティーだった。

出会いから数年後、結婚が決まり、そして日本で生活することになった。
結婚後、イタリアに帰省したときに自然とあの教会に足が向いていた。

教会に辿り着いたとき、ふと、あの日のことを思い出した。
「そうだ！結婚する人と一緒にこの教会を訪れたかったのだ！」

長い間大切にしていた思いが現実のものとなって、今ここにある。



私は、妻にこの場所の感想を聞いてみた。

すると妻は答えた
「教会の中にいると、なんだかすごく懐かしい気持ちになる・・・私、この場所が好き！」

私は、あの日の話を妻に聞かせた。
ふと横をみると、微笑んでいる妻の目に涙が浮かんでいた。

「あぁ、これが運命なのだ」と思った瞬間だった。